英国人写真家の見た明治日本―この世の楽園・日本 (講談社学術文庫)



英国人写真家の見た明治日本―この世の楽園・日本 (講談社学術文庫)
英国人写真家の見た明治日本―この世の楽園・日本 (講談社学術文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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非常に優れた学者と翻訳者

残念ながら、最近長岡祥三氏は82歳でこの世を去ったので、再出版以外はこれは彼の最後の本になる。(再出版としては、2008年9月 アーネスト・サトウ公使日記 1 コンパクト版―明治28年7月28日明治30年12月31日 (1)とアーネスト・サトウ公使日記 2 コンパクト版―明治31年1月1日明治33年5月4日 (2) は出版された。)十年間以上本人との付き合いに恵まれた私にとって、このポンティングについての本はこれほど好評であるのは大変喜ばしいことである。長岡氏の学問のある文芸作品は日英関係の翻訳はほとんどで、(おそらく彼の狙い通り)日本人の間英国に対しての理解、知識と友情を深めることができたのではないかと思う。

一回「長岡さんは単なる翻訳家」というコメントを第三者から聞いたことがある。この意見は変な考えに基づいていると思う。翻訳という仕事は素晴らしい使命であって、特にこんな立派な本の場合は永久に日英文化交流に貢献するし、その学問を高く評価したい。イギリスでもHerbert George Pontingはあまり知られていないが、世界のトップの写真家の一人であったは南極と日本の写真が鮮明に且つ美しく証明している。

この本の他に、長岡氏は下記の翻訳も見事に書いた:ミットフォード日本日記―英国貴族の見た明治 (講談社学術文庫)、アーネスト・サトウの生涯―その日記と手紙より (東西交流叢書) (関口氏と共作、著者が小生)など。(全書のリストを見るには、ページの一番上の本のタイトルの下の「長岡祥三」をクリックしてください。)
純粋な視線

著者ポンティングは、スコット隊の南極探検にも随行した人物。
写真家の目は随所に生かされ、彼の網膜とカメラを通じて捉えられた明治日本の風景が、
鮮やかな色彩と共に読者の眼前に甦るかのよう。

山水の佳景に恵まれた日本を、彼はこの世の楽園の如くに捉え、
また日本人の風俗文化についても殆ど無条件に肯定しているかの感さえあります。
外国人がしばしば問題とするのは日本女性の「不徳に見える行為」ですが、
彼はこれすらも誤解と無理解による不当な批判であると言い、日本人女性の高潔さについて熱弁しています。
その熱烈な好意に、日本人としてはかえって照れさえも感じてしまう程。

その旺盛な好奇心は、しばしば冒険的な旅行にも彼を駆り立てます。
それは富士樹海での藪漕ぎであり、浅間山噴火の最中の写真撮影でありました。
珍しい風景をモノにするためなら、人足に手をあげる事すら厭わないエゴイストぶりも垣間見せます。

外国人の目を通して捉えられた風景は、日本人の風景観にも多くの影響を与えました。
それまで歌枕や名所旧跡の「意味の風景」に拘泥していた日本人の風景観は、
西洋の視線を取り入れることによって、例えば志賀重昂の「日本風景論」などに昇華され、
科学的・分析的に変わって行きます。

しかしポンティングの風景観は写真家らしく、視覚を主とした直接的な情緒感と色彩感に溢れています。
自然の風景をその美しさのままに満喫する彼の無邪気なまでの視線は、
明治日本を見た数多くの外国人中においても、最もピュアなものの一つと言えるでしょう。
日本はほとんど変わっていない!

なにしろ写真が驚きます、それは当然写真家の本ですからね。この本を見る事による(文章を読むより写真に見入る時間の方が長い/写真がもっと大きかったらと真に思います)最大の知的刺激は、明治時代あるいはかなり残滓を残している江戸時代に対する自分の認識の誤りについてです。写真が鮮明なのも驚きですが、そこに写されている日本庭園や散策する人々、今でもたくさんの人が訪れる東本願寺や伏見稲荷などの神社仏閣が、現在とほとんど変わらない。石垣、鳥居、坊さん、建物、そして初老の占い師、そのへんで見かける頑固じじいそのもの。顔の表情が変わらない、顔の造りが変わらない、眼が変わらない。我々は、江戸時代や明治初期は、日本がまだ前近代の時代で、その頃の日本人は今の日本人とは全く異なった”人種”だったと考えている人が多いのではないでしょうか。しかしこの本に掲載されている多くの写真を見ると、何だ日本は明治時代とほとんど変わってないじゃないか、ということは江戸時代ともそうは変わっていない、と感嘆及び驚嘆するのです。日本は変わった環境も多いが、当時そのままの環境もそうとう多く残っていて、最も変わらないところが残されているのは、日本人の心の奥底ではないでしょうか。それは写っている人々の眼や表情から窺い知ることができます。また銅の象嵌や七宝、焼き物、様々の工芸品(その頃はまだ芸術品とは呼ばれていなかった)の当時の日本の職人の技術の高さについての記述も相当な刺激でした。写真をどうぞ、日本に対する認識が変わります。
100年前の日本の歩き方

100年前の日本ツアーガイドに相当する。著者の描く日本は、美化されてるところが多々あり読んでいてすこし恥ずかしくなる。
取り上げられる場所は、京都、阿蘇や浅間山、富士山や富士五湖など今でもポピュラーな観光地が多いから、
これらにいく前に読んでみると旅情が盛り上がっていい感じだ。
写真はさすがにプロフェッショナル、木の幹の質感や解像感もよく出ている。
鹿苑寺の陸舟の松については、今の現物を見るよりポンティングの写真のほうが良いと思った。
写真のいくつかが、構図や表情が微妙に「演出された」感じがする。
この微妙な演出は当時のイギリス人にはきっとわかりやすいのだろうが、
当時の日本人のありのままではないだろう。
イギリス人たちに戦略的パートナー日本に好意を持たせるプロパガンダの臭いが端々にある。
著者が「こんなことでロシアとの戦争に勝てるのか?」的な啖呵を、
日本人にぶった記述があるが、意外とこれが本音なのでは?
気持ちの良い本

久しぶりに気持ちの良い本を読んだ。明治の日露戦争前後に日本を旅した英国人写真家ポンティングの旅行記である。日本人と日本文化を極めて好意的に紹介しており、日本人に生まれたことを誇りに思え、また嬉しく感じた。日本の職人、京都や富士山、鎌倉などの有名観光地、はたまた日本女性など、いろいろな日本の”美点”が紹介されている。そして、当時の一般社会の風俗や習慣を肌に感じることができる。なかには知らないことも多くあって、目から鱗が落ちることもしばしば。たとえば、富士山の中腹にある「馬返し」。これは急坂で馬が登れないという意味と思っていたが、実はこれ以上は神聖な場所なので、馬を入れてはいけないという意味だという。

また、長岡氏の訳の上手さ(日本語文法上の誤りは散見されるが)と日本語の美しさにも注目したい。上品に愛情込めて書かれた(に違いない)ポンティング氏の文章の雰囲気が訳文にも活き活きと写されている。



講談社
シュリーマン旅行記清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))
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江戸幕末滞在記―若き海軍士官の見た日本 (講談社学術文庫)
ミットフォード日本日記―英国貴族の見た明治 (講談社学術文庫)
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英国王室史話〈上〉 (中公文庫)

英国王室物語―ヘンリー八世と六人の妃

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英国人写真家の見た明治日本―この世の楽園・日本 (講談社学術文庫)

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英仏百年戦争 (集英社新書)

越えて来た道―コルベ神父とともに (聖母文庫)

榎本武揚から世界史が見える (PHP新書)

円周率を計算した男

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